最高裁判所第一小法廷 昭和47年(行ツ)64号 判決 1972年9月28日
東京都練馬区北町一丁目二四番一六号
上告人
内田良吉
右訴訟代理人弁護士
高沢正治
同都同区栄町二三番地
被上告人
練馬税務署長
三竹藤三郎
右当事者間の東京高等裁判所昭和四六年(行コ)第六二号所得税更正処分取消請求事件について、同裁判所が昭和四七年四月一三日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。
主文
本件上告を棄却する。
上告費用は上告人の負担とする。
理由
上告代理人高沢正治の上告理由について。
所論の点に関する原審の判断は、正当として是認するに足り、原判決(その引用する第一審判決を含む。)に所論の違法は認められない。したがつて、右違法のあることを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は、独自の見解に基づいて原判決を非難するものにすぎず、採用することができない。
よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 大隅健一郎 裁判官 岩田誠 裁判官 藤林益三 裁判官 下田武三 裁判官 岸盛一)
(昭和四七年(行ツ)第六四号 上告人 内田良吉)
上告代理人高沢正治の上告理由
一、本件更正決定処分が第一審判決別紙(三)の土地についての課税として計算決定されたものであることには上告人、被上告人間に争いがない。
問題は右特定の不動産についての課税処分が他の所得に対する課税処分として便宜的に流用同一視し得るか否かに関るものと思料する。
二、原判決は右流用同一視の根拠として所得税が各種所得を総合して課税対象とするかの如く誤解しその前提に立つて原審控訴棄却の判決をなしているが、
現行所得税法において営業所得・農業所得・利子所得・配当所得・不動産所得・その他の事業所得及び譲渡所得に対する課税方式、課税基準が夫々別異に法定計算されこれらの課税額合算をもつて所得税総額となしていることは法律上明らかである。
三、又譲渡所得の計算は各不動産毎に個別になされるものであることは上告人が原審にて主張したとおりで甲の不動産と乙の不動産では夫々所得額計算の基礎を異にし所得税額は夫々別個に算出さる可きものである。
即ち所得税はこれら各別の所得に対する税額の合算により当該年度の税額決定をみるもので同一人に対する課税として総合された所得税は右各別の所得税額にこれを区分し得るものである。
従而所得税額の更正決定も右区分された各別の所得についてなされるもので総合された所得税額の更正決定としてなされるものではない。